【MRI認定 40】全身MRI撮像の指針

日本磁気共鳴医学会から発令され、前立腺癌の骨転移検出のために行う撮影の指針となります。

第17回で初めて出題されましたが、撮影している施設ではそう難しくはなかったかと思います。

取り入れていない施設も多くあるでしょうし、今後も出題されかねないので今回はこの指針について簡単にまとめます。

また令和2年度診療報酬改定によって、画像診断管理加算2及び3の施設基準が改変され、全身MRI撮影加算が創設されています。

目次

背景

欧州がん研究治療機構(EORTC, European Organization for Research and Treatment of Cancer)によると前立腺癌骨転移に対する画像診断は主に以下となります。
①全身MRI
②コリンPET(日本未承認)
③骨シンチ

全身MRI、コリンPETが推奨され骨シンチは第二選択とされています。

全身MRIは骨転移の診断精度が高いだけでなく低コスト非侵襲的(無被ばく・非造影)であり、経過観察が特に重要な進行前立腺癌の治療選択に有用性が高いとされています。

MET-RADS-P (METastasis Reporting and Data System) 

2017 年に欧州泌尿器科学会が発表した、前立腺癌の骨転移を評価する構造化レポートシステム。

骨転移のある症例遠隔転移のない去勢抵抗性前立腺癌の症例で全身MRIを推奨しています。 
※去勢抵抗性前立腺癌(CRPC):男性ホルモンを抑える治療を進める中でそれに抵抗して発生する癌

撮影に関して

磁場強度、コイルなどのハード面

1.5Tもしくは3T装置。

複数の躯幹部用コイルと脊椎用コイルを組み合わせる。
→ガントリ内臓コイルではSNRが低かったり、パラレルイメージングが使用できず画質担保が難しいためと考えられる

全身(全脊椎を含む広範囲)に対して少なくとも3部位(3station)に分けて撮像する。
→FOVやスライス方向に撮像領域が広いと端の方で歪んでしまったりと画質に影響するためと考えられる

撮像シーケンス 4 + 1(オプション)

①全脊椎T1強調像 (原則 矢状断)

②全脊椎STIR像 or 脂肪抑制T2強調像 (原則 矢状断)

③全身T1 強調像 (水平断 or 冠状断)

Dixon法が望ましいが、Gradient Echo 法の in- phase/opposed phase でも可

④全身拡散強調像 (原則 水平断) 

b 値:0-100、800-1000s/mm2
parallel imaging 併用
mono-exponential model による ADC map 作成
b 値 800-1000 s/mm2 の画像の冠状方向および矢状方向を含む多方向 MIP 処理(複数部位における重ね合わせ画像を必須とする)

水平断での撮像が原則とされているが、冠状断、矢状断で撮像しても良い。
→MET-RADS-P(METastasis Reporting and Data System)では拡散強調像は水平断で撮像と記載されているが、水平断が優れているという十分な根拠はなく、冠状断、矢状断で撮像しても通常再構成は可能。

⑤全身T2強調像 (撮像方向や脂肪抑制付加は問わない)

この撮像はオプションとなる。

前世Toy storyの全身 Tシャツ1アキコ角さん呆れる全身 タイツオプション結構下まで*
全脊 ①T1、②STIR sagittal、全身 ③T1 axial coronal ④拡散 axial ⑤全身T2 範囲:頸椎〜骨盤骨下端

これ覚えるくらいなら普通に覚えた方がいいかもしれません。

撮像範囲

前立腺癌の骨転移はaxial skeleton領域(脊椎・骨盤骨)から始まることが多く頻度も高いため、頸椎上端から骨盤骨下端までを必須とする。

認証などについて

原則として前立腺癌の骨転移検出を目的とした非造影スクリーニング検査とする。

造影検査は可とする。ただし、日本磁気共鳴医学会による本検査に関する認証を受ける場合は撮像法(造影の有無を含む)の届け出、および画像の提出を必須とする。

画像の提出に当たっては、原則として、日本磁気共鳴専門技術者が技術側面から撮像した画像の画質の確認を行い、放射線診断専門医が読影に十分な画質であることを確認したのちに提出する。



画像処理、読影環境、評価項目等に関する細則

① 階調処理:拡散強調像の階調設定においてウィンドウ幅が広すぎると骨転移巣の視認性が低下するおそれがあるため、拡散強調像では骨転移巣が高信号になるようにウィンドウ幅とウィンドウ値を調整する必要がある。また、白黒反転表示を行ってもよい。

② 融合画像:拡散強調像における異常信号域の解剖学的位置を把握しやすくなるように、T1強調像やT2強調像などの他のシーケンスとの融合画像を作ることが望ましい。
→バックをT2WIなどの画像にし、そこへDWIの信号をカラー表示してのせるなど。要するにFusion。

③ 使用する Picture Archiving and Communication Systems (PACS)、ワークステーションの種類は問わないが、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」に基づいて医療機器認証を取得したものに限る。

④ 本検査はあくまでも前立腺癌の骨転移の検出に特化した検査であり、病変局所の詳細な評価を目的としたものではない。よって評価項目は骨転移のみである。前立腺癌局所、リンパ節転移、骨転移以外の遠隔転移巣、播種巣、他臓器の腫瘍や大動脈瘤などの偶発所見については評価対象外である。

⑤ 検査前に予め患者へ説明し、書面にて同意をとること。その際、本検査で異常所見が見つかった場合は後日改めて精査する可能性があることも説明すること。

適応

①未治療でPSA ≧ 10ng/mL、かつ直腸診陽性またはGleasonスコア ≧ 8の前立腺癌症例。

②骨転移を示唆する症状のある前立腺癌症例の骨転移検索。

③前立腺癌骨転移治療時の経過観察。

※ここは覚えなくてもいいと思いますが、適応は以下のように考えられております。
(前立腺癌診療ガイドライン2016では未治療症例で PSA ≧ 10ng/mL、かつ直腸診陽性または Gleasonスコア ≧ 8の症例、および骨転移を示唆する症状のある症例においては、骨シンチグラフィが推奨されています。
画像診断ガイドライン 2016 では PSA ≦ 10ng/mL、Gleasonスコア ≦ 7の低リスク患者では骨シンチグラフィを避けるべきであるが、有症状例や治療後の PSA 再燃例では施行を考慮してもよいとしています。
全身MRIの適応はこれに準ずる。)

臨床に用いる場合の注意 4項目

指針には『主治医(依頼医)が理解しておくべき事項』と前書きがあります。

① 本検査はあくまでも前立腺癌の骨転移の検出を目的とした広範囲検査であり、病変の局所的な精査を目的としたものではない。局所的な評価には別途検査を行う必要がある。

② 骨転移以外の病変(前立腺癌原発巣、リンパ節転移、骨転移以外の転移・播種巣)の診断能については十分なエビデンスがなく、骨転移以外の病変の診断目的で検査するものではない評価対象はあくまで骨転移である。

微小病変や活動性が低い病変が偽陰性となる可能性がある。

拡散強調像で異常信号の部位が全て異常部位とは限らない(感度 90%、特異度 92%)。 質的診断については他の検査で判断する必要がある。例えば脊椎の急性期圧迫骨折や過形成骨髄も拡散強調画像にて異常信号を呈する場合があるので注意が必要である。

患者説明と同意書

以上の注意点があるため、以下の項目について患者へ説明し、書面にて同意をとること。
(上記注意点と同じことを言っています。)

① 本検査はあくまで骨転移の検出を目的とした広範囲検査であり、病変局所の詳細な評価を目的とした検査ではない。

② 本検査で異常所見が見つかった場合、後日改めて精査を必要とする場合もある。

③ 骨転移以外の病変については評価対象ではない。

④ 偽陰性(微小病変や活動性が低い病変など)、偽陽性(脊椎の急性期圧迫骨折や過形成骨髄など)も存在する。

過去問

第17回-50
日本磁気共鳴医学会から発令された「全身 MRI 撮像の指針(2020 年 3 月 23 日 初版)」について正しいものはどれか。2 つ選べ。

1. 1.5 T 装置による撮像を必須とする。
2. 全身拡散強調像は原則 冠状断を撮像する。
3. 撮像範囲は頭頂部から骨盤骨下端までを必須とする。
4. 微小病変や活動性が低い病変が偽陰性となる可能性がある。
5. 臨床に用いる場合は本検査の注意事項を患者へ説明して書面にて同意をとること。

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