【MRIの原理みたいなのその②】磁化と信号取得

意外とすぐ続編書くことになりました。

目次

では

前回では磁場にさらされるとα群、β群に分かれ、飽和パルスを照射すると両群の数が同数となるというところまでです。

 

前回は個々の磁気モーメントについて見てきました。

今回はこれらをまとめて、少し大きな視点で見ていこうと思います。

サッカーで例えると、前回は個人の動きを見ていましたが、今回はチームとしての動きを見ていくこととなります。(例え全然下手ですみません)

 

MRIでは個々の磁気モーメントを観察するのではなく、ある程度集まった磁気モーメントを見ています。おそらく個々の磁気モーメントなんて小さすぎて観察できません。

よく教科書などで見る『RFパルスを照射したら矢印が倒れる』表現は、1つの磁気モーメントではなくある程度集まった磁気モーメントの磁化を表現しているのです。

ではある程度集まった磁気モーメントとはどれくらいの規模でどれくらいのものを見ているのでしょうか。

それは1ボクセル内にある磁気モーメントの集合を見ています。

例えば、FOV25cm、256×256、1mmスライスの条件で撮像すると、1ピクセルあたりの体積(1ボクセル)は約1mm3となります。水で考えれば1mgとなります。

この中にはどれくらいの磁気モーメント、要するに水素原子核があるかというと、、

水1gには6.69×1022個の原子核があるので、1mgでは6.69×1019個の原子核があることになります。

そしてMRIで観察するのは少し余計に多いα群によるので、、

1.5Tの場合ではβ群が10万個あったらα群は10万1個、要するに約20万個あって1個多いということなので水1mgでは3.35×1014余計にα群が多い

そしてこれらをひとまとめとし1つの磁化として扱います。MRIではこれを観察することとなります。

個々の磁気モーメントは55°の角度で歳差運動しているのでベクトルは横方向と上方向に分かれます。しかし横方向のベクトルは様々な方を向くため打ち消され、結果として上方向のベクトルが残り1つの磁化として扱えます。

ではどのようにこの磁化を検出するのでしょうか。

MRIでは静磁場という大きな磁場が働いています。そこにちっちゃいちっちゃい磁化があるのですがこのままでは磁場に埋もれて磁化がわかりません。

そこで共鳴周波数に一致したRFパルスを照射します。

RFパルスは磁場に対し垂直に照射され磁化だけを倒すことができます。

そうすると磁化を検出することができるようになります。

RFパルスを照射された磁化は磁場B0を中心に歳差運動しながら傾いていきます。磁気モーメントの歳差運動と同じ原理で、RFによる磁場B1が磁化に偶力を与えることでクルクルと回り始めます。
この運動はB1が照射されている限り続き、次第にその傾く角度θは大きくなっていきます。式で表すと。

θ=γB1t
↑認定試験でも過去に何度か出てますね。この角度θはフリップアングルとも呼ばれます。
フリップアングルθは、B1の強さ照射時間tによって決まります。
磁化を真横(90°)に倒すものを90°パルス、磁化をさらに倒して真下へ倒すのを180°パルスと言います。

そしてこの上方向の磁化を縦磁化、横方向の磁化を横磁化と呼びます。

RFパルスにより磁化が倒れますが、RFパルスが止むと磁化は次第に静磁場方向へ戻っていきます。この時も歳差運動は続いています。

ここで横にコイルを設置します。90°パルスが照射されると磁化は真横へ倒れ、その後回りながら戻っていきますが、磁力を持つ磁化がコイルに近づいたり遠ざかったりするためコイルに起電力が誘導されて電流が生じます。(ファラデーの電磁誘導)
これが信号となるのです。

ちなみにこれはFID(free induction decay)という信号で、
自由に歳差運動し、コイルに起電力を誘導して時間と共に減衰することから自由誘導減衰とも呼ばれています。

実際の信号はSE(スピンエコー )法やGRE(グラジエントエコー)法で取得されていくのですがこれはまたそのうちとします。



過去からの出題

第5回-2
次の記述について、正しい文章を解答して下さい。

a.Jカップリングは磁場強度に比例する。
b.自由誘導減衰信号はRFパルスにより発生した横磁化により観測される。
c.一般にMR信号はπ/2位相がずれた実部と虚部から成り立つ複素数データをもつ。
d.ケミカルシフト(ppm)は磁場強度に比例する。
e.1Hのスピン量子数は 1/2 で、磁場内に置かれるとエネルギー準位が2つに分かれる。

第8回-1
MRI で使用する RF パルスについて正しいものを選択してください。(正解 3 つ) 

1.フリップ角は磁気回転比に比例する。
2.フリップ角は RF パルス強度に反比例する。
3.フリップ角は RF パルスの印加時間に反比例する。
4.RF パルスの直接作用は陽子を同位相に歳差運動させることである。
5.フリップ角は RF パルスによる歳差運動の周波数と RF パルスの印加時間の積になる。

余談

今回扱った磁化は結局のところα群とβ群の動きで表せます。

それを簡単に見ていきますね。

RFを照射すると角度θ倒れていき、倒れたぶんだけ縦磁化は小さくなります。この時α群はβ群へ遷移し少し減りますが完全な飽和とはなっていません。

ここでさらに照射を続けて真横(90°)に倒します。すると完全に縦磁化は無くなりました。この時α群とβ群は同数で飽和状態となり磁化がないことが説明できます。

90°パルスが飽和パルスと呼ばれるのはこのことから来ています。

まとめ

1.MRIで観察しているものは
①個々の磁気モーメントが集合した磁化を見ている

2.RFパルスについて
①磁化に対し共鳴周波数と一致したRFパルスを照射する
②θ=γB1t 磁化の倒れる角度θは、B1と照射時間tによる
③磁化を真横に倒すのを90°パルス、真下に倒すのを180パルスという

3.信号取得
①RFパルスが照射されると磁化は倒れ歳差運動しながらまたB0方向へ戻っていく
②その過程でコイルに起電力が誘導されて電流が生じる

 

原理の記事作るのは思ったよりしんどかったですし、あまり需要がない?気がするので次回続編は遅いかもしれません。原理の説明って難しいですね。

またよろしくお願いします。

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