MRI認定試験過去問解説 第5回-13【脂肪抑制】

脂肪抑制についてです。

目次

問題

脂肪抑制法について、正しい文章を解答して下さい。


a.CHESS 法は脂肪の周波数領域に選択的に RF パルスを照射し、その直後にデータ収集を行う。
b.STIR 法における反転時間は脂肪の T1 値を用いるのが一般的である。
c.水選択励起法はプレパレーションパルスを用いる手法である。
d.高速 GRE 法に脂肪選択反転パルスを用いることにより CHESS 法に比べ撮像時間の高速化が可能である。
e.脂肪選択反転パルスに断熱パルスを使用することでより均一に脂肪の縦磁化を倒すことができる。

解答

e

解説

CHESS法

脂肪飽和法、FatSatなどとも呼ばれます。

①脂肪の共鳴周波数に一致したCHESSパルスを照射します。(BW約200Hz、照射時間10〜15ms、90°)
すると脂肪の縦磁化はxy平面へ倒れます。(横磁化となる)
②次にスポイラー磁場勾配を印加して横磁化の位相を分散させて消失させます。

これで脂肪の磁化は消えたので次の励起パルスに反応せず脂肪の信号の無い画像を作成できます。

CHESSパルス:chemical shift selective pulse

問aでは位相分散についての記述がないため×と思われます。

STIR

IR法についてはこちらで説明しました。

STIRは初めに180°パルスを照射し、脂肪の磁化が0まで回復したところで90°パルスを照射します。そうすると脂肪は信号を出せなくなります。
この180°〜90°パルスまでの時間をTI(inversion time)と言います。

そしてTIさえわかればあらゆる組織を抑制できます。

TIはその組織の「T1×0.693」で算出できます。

STIRはshort τ inversion timeといい、脂肪信号抑制を目的にTIを短く設定したIRシーケンスです。

脂肪のT1を約250msだと仮定すると、適切なTIは

TI=250×0.693=173ms となります。

問bについて、”反転時間は脂肪の T1 値を用いる”は合っていますが×0.693が足りないので不適切となります。

水選択励起法

水と脂肪はそれぞれ共鳴周波数が異なり、水選択励起法はその差を利用した方法と言えます。

水と脂肪の化学シフト差をΔνとします。

励起90°パルスを二項パルスに置き換えます。(90° → 45°-45°)
この45°-45°パルスの間隔を1/(2Δν)とします。

まず45°パルスを照射すると水と脂肪はどちらもy方向に45°傾きます。

②1/(2Δν)後には水と脂肪は反対方向を向きます。(1/Δν後に同位相となり同じ方向を向くため、その半分の1/(2Δν)後で反対の逆位相となります)

③1/(2Δν)後にまた45°パルスを照射すると、脂肪はz軸へ、水はy軸へ傾きます。
要するに水だけが90°パルスを受けた状態となり脂肪は信号を出さないことになります。

問cですが、プレパレーションパルスとは予備パルスとも呼ばれ、撮像の際に何らかの効果を得るために前もって照射するパルスであり、IR法のIRパルス、T2強調のためのDEパルス(二項パルス)などがあります。

水選択励起法にも二項パルスが使用されるのですが、こらは予備パルスとしてではなく励起パルスとして用いられるので問cは×と思います。

SPIR

Spectral IR、メーカーによってSPIR(Philips,Siemens)、SPECIAL(GE)とよ呼ばれます。

原理はCHESSとSTIRを合わせたような方法です。

CHESSでは90°のCHESSパルスを照射しますがそのFAを少し大きく(100〜110°)照射し、脂肪信号がnullまで回復した時に励起RFを照射して信号を収集します。

null pointの前後に広範囲で脂肪抑制が効きます。そのため脂肪抑制効果が長くダイナミック造影の撮像に使用されています。

メリット
STIRより撮像時間が短く、脂肪特異性もある。

デメリット
CHESSに比較しTIの分若干撮像時間が伸びる。

問dについて、○かと思っていましたが、やはりCHESS法の方が早いと考えられ×としました。

SPAIR

Spectrally Adiabatic IRといい、SPIRにadiabatic(=断熱)が加わりました。

SPIRでは100〜110°のパルスを使用していましたが、SPAIRでは180°パルスを使用します。しかし180°パルスはRF磁場不均一の影響を受けやすく正確なFAになりませんでした。
ここでadiabaticパルス(断熱パルス)を使用します。

断熱パルスとは周波数と振幅を変調させたRF波であり、RF分布が不均一でも正確なFAを作る特徴があります。

FAがSPIRより大きいため、null pointまでの回復時間(TI)はSPIRよりかかります。

しかしSPIRと比較し断熱パルスを使用しているためB1不均一による脂肪抑制不良が改善されやすいです。

問eは○ですね。

まとめ

脂肪抑制はたくさん種類があるので問題でも問われやすいと思います。また臨床ではそれぞれの特徴を知っていることで使いわけが出来るのでそのためにも覚えておくのは大事です。

参考書籍・文献

MRI完全解説第2版 P311
MRI集中講習 P98
など

 

解答に関して、今まで培った知識や書籍・文献を参考に導出したもので、私の認識不足により間違っている可能性もございます。ご理解いただいた上でご参考ください。

MRI認定試験の合格を目指している方のお手伝いができればと思っています。

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