ドレーンは体の中に溜まった液体を体外に排出するための管です。
技師の学校ではあまり詳しく習う機会がありませんので病院に勤めて初めて意識するかと思います。
そんなドレーンの機能や気をつける事について書いていきます。
ドレナージについて
ドレーンとは体液を出すためのチューブであり、その処置のことをドレナージと言います。
ポータブル撮影で病棟へ行ったとき患者さんのお腹からチューブが出ていることはありませんか?
これらがドレナージをされている状態です。
ドレーンが目的の位置からずれていると、液体が排出されないまま腹腔内に溜まってしまいその溜まった液体が消化酵素や細菌を含んでいると腹膜炎になる可能性があります。
また液体が排出されないでいると改善していると誤解し異常に気付きづらくなります。
そのためこのような患者さんは定期的にレントゲン撮影をしてドレーン位置を確認します。
撮影に特別な技術は必要ありませんが気をつけるべき点はあります。
撮影に気をつけるところ
ドレーンを含めて撮影
そりゃそうですね。
ドレーンが写っていなければドレーン位置は確認できません。
またドレーンは手術により留置場所が異なります。
胃や食道の手術では「左横隔膜下」「ウィンスロー孔」
肝臓の手術では「左右横隔膜下」「ウィンスロー孔」
胆嚢では「モリソン窩」「ウィンスロー孔」
直腸では「ダグラス窩」
といったように手術部位近辺にドレーンが留置されます。
大抵は排液バックにドレーンの留置先が記されていたりしますが、もし記載がない場合は手術部位からある程度は推測できます。
(不明の場合はカルテを参照したり看護師さんに聞くのがいいかもしれませんが)
留置場所はたくさんあり覚えるのが大変ですが、上図を簡略化して、、
この3つだけ押さえておけば他は名称とおりの場所なので覚えられそうじゃないでしょうか。
腹部撮影は横隔膜から恥骨まで入るべきですが体格の大きい患者さんでは難しいですよね。
ここは病院やドクターの方針によりますが、
横隔膜下にドレーンがある場合は上腹部は確実に含めて恥骨は諦める。
ダグラス窩にドレーンがある場合は下腹部を確実に含めて横隔膜を諦める。
両方留置の場合では吸気時で撮影もしくは2枚に分けて撮影するなどの工夫が必要となります。
ドレーン抜去に注意
患者さん自身が抜いてしまうのを自己抜去、何らかの外力で抜けるのを事故抜去と言います。
撮影で気をつけることは
ドレーンの有無を確認し、常にドレーン(その他ルートなど)を意識し事故抜去を防止すること。
もちろん患者さんへの配慮は忘れずに。
気をつけるポイントをあげるとしたら、、
レントゲン室へ来た場合
- 車椅子や歩行器などに引っ掛けない
- 自分の足や患者さんの足で引っ掛けない
- 撮影ブッキーなどで引っ掛けない
病室撮影の場合
- 体位変換時に引っ張らない
- パネル角で引っ掛けない
- ベット周りを移動する時足に引っ掛けない
- ベットギャッジアップ時に引っ張らない
などですが、まだまだ事故の可能性はあると思います。
また病室撮影はレントゲン室で撮影するのと違い常に環境が異なるためより気をつけなければないでしょう。
病院によってはポーター担当者は別のモダリティと併用する事が多く、急いで病棟撮影を終わらせなければならない職場環境の病院もあると思います。
ですが、注意すべき事が多くある病室撮影であるからこそ急がずに落ち着いて行うべきであり、上司から「急いで終わらせてきてっ」と言われても焦らないことが重要かと。
病室撮影から帰ってきて「遅かったね」と嫌みを言われても適当にウソでも言って流しましょう。
別にサボってる訳ではないですからね。
撮影条件や画像処理
基本的にはいつも通りの条件で撮影することとなります。
しかし腹水などでは放射線を吸収しやすい状態であり条件不足になることがあるため撮影条件を少し強めに設定したりします。
被曝は最低限にとどめるべきですが条件は下げすぎないべきかと考えています。放射線が足りず再撮影になってしまっては半末転倒なので。
画像処理ではドレーンの先端位置がわかるように処理し、白くなりすぎないようにします。
ドレナージの種類
今更ドレナージの説明ですがドレナージの目的や排出方法で種類分けされます。
目的による分類
① 予防的ドレナージ:術後に予想される体液の貯留を防止。
② 情報ドレナージ:排液を観察して術後の出血や感染を把握。
③ 治療用ドレナージ:膿瘍の排出や洗浄を目的とする。
排液方法による分類
① 閉鎖式:ドレーンが排液バックに繋がれているもの。外界と接触しないため感染を起こしにくい。
② 開放式:排液バックには繋がれていなくガーゼで覆われている。とても短い。解放されているため感染リスクは閉鎖式に比べ高い。
③ 半閉鎖式:開放式の先端がパウチにつながっている。
閉鎖式は感染リスクが低く推奨されています。そしてさらに2種類に分類されます。
① 受動的:自然圧差や毛細管現象により排液
② 能動的:排液バックが陰圧となっており排液
これらは知っていなくとも技師業務に差し障りないかと思いますが、
知っていたら新人にドヤれますね。
多分ウザがられますが。
ちょっと追記
ドレーンにはMRI禁忌のものがあります。
閉鎖式ドレーンには低圧持続吸引システム(能動的)というものがあり、リザーバー(排液バック)部分にスプリングが使われていてスプリングの押す力が解放されることにより陰圧をかけて排液させる仕組みとなっています。
このスプリングは強磁性体でありMRIに吸着されるため、ドレーン抜去やさらにはもっと重大な事故の可能性があります。
ざっくり調べたのですが、、
日本コヴィディエン株式会社の『マルチチャネルドレナージセット』
ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の『J-VACドレナージセット』
住友ベークライト『SBバックスリム(R)スーパースムーズ』
村中医療機器株式会社『MMI』
これらが低圧持続吸引システムを用いたもので他にもまだありそうです。
対応としてリザーバー部分を取り外し、スプリングを含まないものに付け替えるなどが考えられます。
追記ですがドレーンの排液バックは挿入位置より高く持ち上げてしまうと排液が逆流する恐れがあるため注意しましょう。
最後に
今回撮影に関してはほとんど触れなかったので面白くなかったかもしれませんね。
たまにこんなのも書いていこうと思っています。
今年のGWは全然仕事が当たらなかったので休み明けがめんどうです。ツラい、しんどい、やだな。笑
がんばろーー。
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