MRI認定試験過去問解説 第5回-25【トランケーション】

トランケーションアーチファクトに関しての問題です。

久々に解説記事書きます。

目次

問題

トランケーションアーチファクトについて、正しい文章を解答して下さい。

a. 基本的に位相エンコード方向のみに生じる。
b. TE を小さくすると抑制できる。
c. バンド幅を大きくすると抑制できる。
d. FOV を大きくすると抑制できる。
e. 生データフィルターを使用すると抑制できる。

解答

e

解説

トランケーション(truncation)アーチファクト

“truncation”には切り捨て、打ち切りの意味があります。

日本語では打ち切りアーチファクトと呼ばれていますね。

 

MR画像の出来方は、

被写体に磁場勾配を印加することで位置情報が付加されNMR信号はフーリエ変換されてk空間に入ります

そしてk空間から逆フーリエ変換を行うことでMR画像を作ることができます

k空間内の信号はアナログであり、そのままのアナログ信号から逆フーリエ変換をすることはMRIには困難となります。

そこでアナログ信号からMRIが処理しやすいようにデジタル(離散)化させます。

これがデジタルサンプリングという過程です。

なので逆フーリエ変換は正確には『離散逆フーリエ変換』となります。要するにフーリエ級数ということです。

この過程によりk空間がデジタルデータに置き換わります。

いよいよMR画像の作成ですが、MR画像のある点の信号強度M(x,y)はk空間の全ての座標が関与することとなります。
(k空間のn行m列の全座標 nΔk、mΔk)

M(x,y)の算出は

ちょっと情報量が多いですが、振幅a(n,m)、b(n,m)の正余弦波の重ね合わせにより各座標の磁化分布M(x,y)が表されます。

(↑の式は無理に覚える必要はありません。)

ここで

n,mを無限∞に重ね合わせることでM(x,y)となるのですが実際には不可能であり、ある一定の値で打ち切ることとなります。

その値がサンプリング数であり、(n=256,m=128)などです。

n,mの値が大きいほどM(x,y)はより正確な近似になりますが検査時間が長くなることから限界があります。

n,mを有限の値で打ち切ることにより近似は正確でなくなると、信号強度が大きく変化する境界で縞状のアーチファクトが観察されます。

これがトランケーション(打ち切り)アーチファクトです。

発生しやすい場所は「頚椎Sagの脊髄」や「頭部Axの脳実質の外側」になります。

頚椎では脊髄空洞症との誤認がないように気をつけなければなりません。

アホな僕はMRI担当になってまもない頃モーションアーチファクトだと思っていました。笑

 

話を戻し、このアーチファクトは位相エンコード方向と周波数エンコード方向の両方に発生します。

しかし位相エンコード方向で発生しやすいという特徴があります。

撮像時間はTR×Ny×NSAによって算出されるため、通常では位相エンコード数(Ny)を小さくして時間を短縮させます。

そうすると位相エンコード方向の方が小さくなり近似式の不正確さが増すためトランケーションアーチファクトが発生しやすくなります。

上図の頚椎では左右が位相エンコード方向となります。

 

では、これらを踏まえてこのアーチファクトの対策について考えていきます。

エンコード方向のスワッピング

このトランケーションアーチファクトは位相エンコード方向に発生しやすい特徴があるため周波数エンコードと位相エンコードを入れ替えること(スワッピング)でアーチファクトから観察したい部位を避けることができます。

ただしこの方法はモーションアーチファクトや折り返しアーチファクトに気をつけなければなりません。

もしスワッピングするならオーバーサンプリングやサチュレーションパルスを駆使するといいと思います。

マトリックス数の増加・ピクセルサイズを小さく

マトリックス数を増加させるとトランケーションアーチファクトの周期が縮まり発生範囲が狭くなります。

この時FOVは変化させない(大きくさせない)ことが条件となります。

しかしSNRの式から

FOVを変えないマトリックス数の増加はピクセルサイズが小さくなりSNRが低下してしまいます。

またマトリックス数の増加により撮像時間も延長するため調整には気をつけなければなりません。

 

ちなみに、アーチファクトの周期は縮まりますが振幅は変化しません。

サンプリング時間の延長(BWの狭小)

サンプリング時間を延長させることでアーチファクトを抑制できます。

サンプリング時間とBWは反比例の関係があるためプロトコルを調整するときはBWを狭くすることでこの効果が得られます。

生データフィルタの使用

生データにフィルタをかけることでアーチファクトを抑制できます。

またSN比が向上しますが空間分解能は低下してしまいます。

生データフィルタにはHanning(ハニング)フィルタなどがあります。

問について

a. 基本的に位相エンコード方向のみに生じる。

位相エンコード方向、周波数エンコード方向の両方に生じるので×

b. TE を小さくすると抑制できる。

TEは関係ありません。

c. バンド幅を大きくすると抑制できる。

BWは小さくします。

d. FOV を大きくすると抑制できる。

FOVは小さくします。

e. 生データフィルターを使用すると抑制できる。

○です。

まとめ

トランケーションアーチファクトについてでしたがとっつきにくいためわかりづらいアーチファクトです。

しかし発生原因がわかればなんとなく解答がわかってくると思います。また理解が難しいようであれば抑制方法に関してはとりあえず暗記でもいいと考えています。

 

実際に頚椎でトランケーションアーチファクトが発生した場合アーチファクトの抑制も大事かもしれませんが、発生部位のAxを撮影するなどで空洞症を否定できれば必ずしも抑制は必要とならない場合もあります。

テストの解答とは違い臨床では臨機応変に対応できればいいのではと思います。

参考書籍・文献

MRI完全解説第2版 P173
MR撮像技術学 P164
MRIの基本パワーテキスト P203

 

解答に関して、今まで培った知識や書籍・文献を参考に導出したもので、私の認識不足により間違っている可能性もございます。ご理解いただいた上でご参考ください。

MRI認定試験の合格を目指している方のお手伝いができればと思っています。

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