MRI認定試験過去問解説 第5回-2【Jカップリング】

Jカップリングやケミカルシフト、MR信号についての問題です。

目次

問題

次の記述について、正しい文章を解答して下さい。


a.Jカップリングは磁場強度に比例する。
b.自由誘導減衰信号はRFパルスにより発生した横磁化により観測される。
c.一般にMR信号はπ/2位相がずれた実部と虚部から成り立つ複素数データを持つ。
d.ケミカルシフト(PPM)は磁場強度に比例する。
e.1Hのスピン量子数は1/2で、磁場内に置かれるとエネルギー準位が2つに分かれる。

 

解答

b,c,e

解説

Jカップリング

詳細は長くなってしまうので別な記事にて記載しようと考えています。

脂肪にはメチル基やメチレン基などいくつかの基を構成する1Hがあります。それらが磁気的影響を与え合い、共鳴スペクトルをとるとそれぞれのピークが分裂し周波数ズレを起こしているのがわかるのですがこのズレをJカップリング定数と言います。

Jカップリング定数は磁場強度には無関係です。

自由誘導減衰 free induction decay

90°パルス照射後、Z軸(静磁場方向)を向いていた磁化はXY平面に倒れます。
倒れた磁化は歳差運動しながら減衰していきこの信号がFIDとなります。


ここでXY平面にコイルを設置すると磁化が近づいたり遠ざかったりするのでコイルに起電力が誘導されて電流が生じNMR信号が取得出来ます。(ファラデーの電磁誘導)

まとめると
自由に歳差運動し、
② ファラデーの電磁誘導によりコイルに起電力が誘導され電流が生じる。
③ そして時間と共に減衰していく。
→自由誘導減衰FID

また、磁場の不均一性により減衰するのでT2ではなくT2*減衰です。

MR信号

信号は上記の様に、磁化の回転によりコイルに誘導される起電力であり正余弦波で周期的に増減します。
ここで余弦波は偶関数であるため不具合が生じます。それは検波という行程の時、基準周波数より高い周波数なのか低い周波数なのか分からなくなってしまいます。ここで位相を90°(π/2)進めるか送らせるかして奇関数の正弦波にすることで周波数の高低を区別します。この方法を直角位相感受性検波と言います。

基準角周波数で検波した信号は実信号、基準角周波数から位相をずらして検波した信号は虚信号のため複素数です。

複素数:実数と複素数を組み合わせたもの。

ケミカルシフト

同じ磁場内であっても異なる分子の1Hは異なる周波数で歳差運動をします。この周波数差がケミカルシフト(化学シフト)と言います。

ケミカルシフトは、1H原子核へ届くはずの外磁場が電子によって磁気遮蔽されることにより1H原子核の感じる磁場が低くなり、共鳴周波数が低くなります。

有機化合物の中で磁気遮蔽効果が最も大きい、TMS(テトラメチルシラン)の共鳴周波数との差をppmで表したものをδ値と言います。

水のδ値は4.65ppm
脂肪のδ値は1.1ppm
よって、水と脂肪のケミカルシフトは約3.5ppmと言われております。
※脂肪はメチル、メチレン、メチンなどから構成されておりそれぞれの割合によりδ値は前後します。

ケミカルシフト(ppm)は磁場に依存しません。

しかし、Hzで表す場合は磁場に影響されます。

1.5Tでの水と脂肪の共鳴周波数差は?
まず、1Hの共鳴周波数は ω0=γB0 よりω0=42.58×1.5=63.87MHz
水と脂肪のケミカルシフトは3.5ppm
3.5×63.87≒224Hz

3Tでは約450Hz、1Tでは約150Hzと、Hz単位では磁場に依存します。

1Hの磁場内でのエネルギー準位

長くなりそうなので省略します。

1Hのスピン量子数は1/2であり、磁場内におかれると、磁場方向をZとしそのZ軸から55°と125°の正と負の方向の二つにエネルギー準位が分かれます。

まとめ

今回も基礎的内容となっておりよく出題されるものです。

参考書籍・文献

MRI完全解説第2版 P29,65,108,122,304,336
MRIの基礎パワーテキスト P46
など

 

解答に関して、今まで培った知識や書籍・文献を参考に導出したもので、私の認識不足により間違っている可能性もございます。ご理解いただいた上でご参考ください。

MRI認定試験の合格を目指している方のお手伝いができればと思っています。

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