MRI認定試験過去問解説 第5回-20【パラレルイメージング】

パラレルイメージングに関しての問題です。

目次

問題

Parallel Imaging について、正しい文章を解答して下さい。

a. SENSEの展開アルゴリズムはk空間上のデータに対して行われる。
b. Reduction factor(短縮率)を2倍にするとSNRは1/2になる。
c. Geometry factorが大きくなるとSNRは低下する。
d. リップアーチファクトとは、折り返しにより生じるFOV中心付近のアーチファクトのことをいう。
e. Geometry factorは撮像領域内で一定である。

解答

c,d

解説

パラレルイメージングとは

簡単に言うと撮像時間を短縮する技術です。

パラレルとは「並行」や「同時に」という意味があり、パラレルワールドやパラレルキャリアなどと使われています。

パラレルワールドは現在いる世界の他に並行してもう一つ別な世界がある、今で言う異世界的な感じですね。

パラレルキャリアは一企業だけでなく同時に他の分野でもキャリアを持って活躍することです。

そしてパラレルイメージングのパラレルは「同時に複数の処理を行う」という意味を持っています。

何をやっているかというと、複数のコイルを用いて位相エンコードを間引きます

撮像時間は、

で計算されます。

このNy(位相エンコードステップ数)を減らすと撮像時間が短縮されるのがわかります。

また、パラレルイメージングは実空間で操作するSENSEk空間で操作するSMASHの2つに分けられます。

SENSE (sensitivity encoding)

SENSEの行程について説明します。

① k空間の位相エンコードステップを間引いて信号を取得します。
 k空間を間引くのでΔkyは大きくなり、FOVyが小さくなります。『k空間について
 折り返し画像が生じます。

② 各コイルの折り返し画像を作成します。

③ 各コイルの空間感度差を利用して折り返しのない通常の画像を作成します。

このSENSEはどのようなk空間軌跡でも使用できます。

SENSEのS/Nは?

k空間を間引いて取得する数について、上記の説明では2行に1行を取得しました。

この『本来の位相エンコードステップ数』/『実際に取得する信号数』をreduction factorと言います。

簡単にいうと「○行に1行取得する」の○がreduction factorです。なので先ほどの場合は「2」となります。
4行に1行取得では4となります。

撮像時間は、TR×Ny×NSAでしたが、このNyが間引かれるためパラレルイメージングを使った撮像時間は、
本来の撮像時間の1/Rとなります。(R=reduction factor)

reduction factorを大きくしてより撮像時間を短くしたいですが、その分S/Nが下がります。

gはg因子(geometry factor)と呼ばれ、コイルの配置によって変動しまた各ボクセルごとに異なります。

SENSEは撮像時間を短くできますが、SENSEを使用せず全行取得した時のS/Nよりも1/√Rだけ低下し、g因子にも影響を受けてさらにS/Nは低下します。

ちなみにSENSEはメーカーによって、ASSET、SPEEDER、RAPIDなどとも呼ばれています。

SMASH (simultaneous acquisition of spatial harmonics)

正式名称が長いですね。
simultaneous:同時、acquisition:取得、spatial:空間的、harmonics:倍音
直訳で”空間的倍音の同時取得”となります。

① 複数のコイルが位相エンコード方向にあるとし、各コイルの空間感度分布を測定します。

② 各コイルの空間感度分布に重み付けをし、正余弦波の合成感度分布を作ります。

③ 先ほどの4つの合成感度分布からk空間を4行づつ間引いて5行に1行でスキャンします。(4つ採用の場合)

④ 今の実測値と合成感度分布から間引いた行の信号を算出してk空間を埋めて、全FOVの画像を作成します。

このように、複数のコイルの感度分布を利用して1回の位相エンコードから複数の位相エンコードを作りk空間を埋めます。

これがk空間内で操作されるSMASHです。

SMASHのS/Nは?

まずSMASHのreduction factorは採用した合成感度分布の数になります。先ほどの例では4となります。

そしてS/Nは合成感度分布に依存するのですが、それはコイルの空間感度や重み付けの正確性に左右されます。

実際のところ正確性に欠けるため臨床に際してSMASHのS/NはSENSEに比べとても低いです。

そこでGRAPPAという技術が臨床で使われています。

GRRAPA (グラッパ)

GRAPPAではSMASHで間引かれていたk空間の中心部分の複数行を収集します。
これをACS(autocalibration signal)と呼びます。

先ほど③の実測値からACSを補正し、より正確な重み付けを算出します。
その重み付けを用いてより正確な非実測値の信号を算出します。

これらによって各コイルの画像を作成しさらに強度画像として重ね合わせて最終的な画像が完成します。またこれにより位相エラーによる信号損失が避けられます。

SMASH系のパラレルイメージングはGRAPPAの他にARC、CAIPIRINHAなどがあります。

lip like artifact

パラレルイメージングにおいて、FOVを小さくしすぎたりreduction factorを上げすぎることにより画像中心部に唇型のアーチファクトが発生します。

折り返しが完全に展開できないことが原因です。

臨床について

パラレルイメージングにはSENSE系とSMASH系がありますが臨床では使い分ける必要があります。

SENSE系ではCalibration scanが必要ですがSMASH系では不要であり、また体動のある部位ではこれが弊害を生じSENSE系では画像劣化の原因となります。

SMASH系では各画像ごとに自動補正するのでこのようなことは起こりにくいです。

患者の状態、撮像部位によって良し悪しがあり、コイル、シーケンスによって制限もかかるため普段から自施設のプロトコルを確認しておくといいと思います。

今まで何気にSENSE系で撮像していたものをSMASH系に変えたら画質が良くなるということもあるかもしれません。

まとめ

パラレルイメージングについてでした。k空間外がSENSE、k空間内がSMASH。たまにどっちがどっちかわからなくなることがありますし問題でも出されやすいです。名前も何気に似ているので。
僕は「うちの中でスマブラをやる(内、スマッシュ)」と覚えました。ダサいゴロですが。
またお酒好きな方なら気づいたかもしれませんがグラッパはスピリッツでカイピリーニャはカクテルの名前です。
なので先ほどのゴロに足して「うちの中でお酒飲んでスマブラをやる」と覚えたらよりダサく覚えやすいと思います。

参考書籍・文献

MRI完全解説第2版 P203

 

解答に関して、今まで培った知識や書籍・文献を参考に導出したもので、私の認識不足により間違っている可能性もございます。ご理解いただいた上でご参考ください。

MRI認定試験の合格を目指している方のお手伝いができればと思っています。

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