EOBの問題は毎年1問くらいのペースで出題されており頻度は高めです。
臨床では馴染みがあっても問題の内容は造影剤の特徴についてなど意外と知らない事が問われたりしています。
今回はEOBに関しての問題にのみ焦点を当て、その他造影剤については改めて記事にします。
EOB・プリモビスト
名称
一般名はガドキセト酸ナトリウムと呼ばれ、線状型MRI用肝臓造影剤です。
第12回では「Gadolinium-ethoxybenzyl-diethylenetriamine penta-aceticacid」(ガドリニウムエトキシベンジルジエチレントリアミン五酢酸)という名称で問われており、EOBと気付きにくく意地悪されているので注意です。
投与量は、「成人には本剤0.1mL/kgを静脈内投与」
例えば60kgの患者だと6ml投与ということになりますね。
患者に関する注意
気管支喘息やアレルギー体質を有する患者、または両親兄弟にこれらを有する患者。
薬物過敏症の既往歴のある患者。
血清ビリルビン値が3mg/dLを超える患者。
→糞中排泄率が低下し肝実質の信号増強効果の減弱が見られます。しかし追加投与は認められていません。
腎障害、腎機能低下の恐れのある患者。
腎機能を十分に評価した上で慎重に投与する事。排泄が遅延するおそれがあります。
eGFR(estimated glomerular filtration rate:推算糸球体ろ過値)が30mL/min/1.73m2未満の慢性腎障害、急性腎障害の患者
→腎性全身性線維症の発現のリスクが上昇する報告があり他の検査で代替することが望ましいと記載があります。
第14回-34の造影剤の問題でもこの件が問われています。
その他注意として、数年前に小脳歯状核・淡蒼球等に沈着したとの報告があった事より造影検査の必要性を慎重に判断することとの記載もあります。
排泄など
健康成人男子(6名)に本剤0.1mL/kgを静脈内投与したとき、投与後4日目までに投与したGdの57%が尿中に、39%が糞中に排泄された。
社内資料: 薬物動態(2007年10月19日承認、CTD2.7.2.2.3)
↑結構大事ですので覚えておきましょう。
クソサンキュー!おしっ、コナン!で僕は覚えました。
ただの語呂ですのでお許しください。
緩和度
たびたびDTPAとの比較で問われることがあります。数値については聞かれたことがありませんが、血漿中でEOBの方が緩和度が高いことは覚えておきましょう。(ちなみに水中でも高いです)
撮影時間と持続時間
肝細胞造影相は、本剤投与20分後から撮影可能で、信号増強効果は少なくとも2時間持続する。
こちらも過去問で出題されています。
過去問からの出題
第5回-28
第5回-28
肝特異性造影剤Gd-EOB-DTPAの一般的な造影パターンについて、正しい文章を解答して下さい。
a.肝嚢胞は動脈相で増強効果なし、肝細胞相では造影剤の取り込みはない。
b.限局性結節性過形成(FNH)は動脈相で増強効果あり、肝細胞相では造影剤の取り込みはない。
c.血管腫は動脈相で peripheral globular enhancement、肝細胞相では造影剤の取り込みはない。
d.古典的肝細胞癌は動脈相で増強効果あり、肝細胞相では造影剤の取り込みはない。
e.肝細胞癌組織内に胆汁を産生する green hepatoma は動脈相で増強効果あり、肝細胞相では造影剤の取り込みはない。
解答
a.○です。
b.×異常血管に対する過形成、T1,T2は肝と同程度の信号、DWIで高信号。肝細胞への取り込みに関与するトランスポーターが正常肝よりも増強している可能性があり肝細胞相で取り込みがあり高信号となります。
c.○peripheral globular enhancement:肝血管腫に特徴的なダイナミック早期での辺縁部の点状~斑状の強い増強効果。造影剤は取り込みません。
d.○です。早期肝細胞癌では動脈相で染まらず、肝細胞相でも取り込みません。異形結節は動脈相で染まりませんが肝細胞相で取り込みがあります。
e.×肝細胞相で取り込みがあります。
第5回は所見に関してでした。
第6回-6
第6回-6
Gd-EOB-DTPA 造影検査について、正しい文章を選択して下さい。(正解2つ)
1. 健常人に投与した場合、50%以上が尿中から排泄される。
2. 投与後、肝臓の信号増強効果は少なくとも2時間持続する。
3. 投与後、約 20 分で肝臓の Kupffer 細胞に取り込まれ T1 強調像で肝実質は高信号を呈する。
4. 動脈相で濃染する結節と肝臓のコントラストは、一般的に Gd-DTPA より高く描出される。
5.ほとんどの血管腫は wash out が遅延するので、投与後 20 分の相は高信号として描出される。
解答
a.投与後 4 日目までに投与したGdの 57%が尿中に、39 %が糞中に排泄のため○です。
b.これも○です。
c.×間違って覚えている方もいるかもしれませんがKupffer細胞ではなく肝細胞に取り込まれます。Kupffer細胞は肝臓内の組織マクロファージでSPIOを取り込みます。
d.×詳しくはわかりません。
e.×肝細胞相では血管腫は低信号となります。
第8回-18
第8回-18
ガドキセト酸ナトリウム注射液(EOB・プリモビスト)について正しい記述を選択してください。(正解 2 つ)
1.臨床における通常投与量は 0.1mmol/kg である。
2.血漿中の R1 は、Gd-DTPA 造影剤の約 1/2 倍である。
3.健常人の場合、造影剤の約 4 割は糞中から排泄される。
4.投与後 1 分程度より肝臓の細網内皮系細胞に取り込まれはじめる。
5.NSF(腎性全身性線維症)に対して Gd-DTPA 造影剤と同様の取扱いを行う必要がある。
解答
1.× 単位が違います。0.1ml/kg
2.×R(大文字)は緩和速度を表す記号ではありますがおそらく問はr(小文字)の緩和度を指していると思います。EOBの方が緩和度が大きいため×です。
3.○投与後 4 日目までに投与したGdの 57%が尿中に、39 %が糞中に排泄。
4.×細網内皮系細胞はクッパー細胞であり、EOBは肝細胞に取り込まれます。
5.○です。
第9回-18
第9回-18
第8回-18と同じ問題
第10回-18
第10回-18
第8回-18と同じ問題
第11回-19
第11回-19
第8回-18と同じ問題
第12回-47
第12回-47
Gadolinium-ethoxybenzyl-diethylenetriamine penta-aceticacid 検査について正しい文章を選択して下さい。(正解 2 つ)
- 主として胆汁に排泄される。
- 細胞外液と肝細胞に分布する。
- 造影剤投与後 15 分から撮像可能である。
- 造影効果は腎機能の程度によって変化する。
- 造影剤はトランスポータによって肝細胞に取り込まれる。
解答
1.×投与後4日目までに投与したGdの 57%が尿中(腎)に、39 %が糞中(胆)に排泄されます。
2.○です。
3.×肝細胞造影相は20分後から撮像可能となります。しかし問に肝細胞相という文言がないので答えにくいですね、消去法で×とします。
4.×軽度から中等度肝障害では有意な肝実質の信号増強効果の減弱はみられませんが重度肝障害では肝実質の信号増強効果の減弱が認められています。
5.○です。
第13回-18
第13回-18
MRI の造影検査や造影所見に関する正しい記述はどれか。(正解 2 つ)
1. eGFR は糸球体1分間あたりの濾過能力である。
2. 本邦で認められている消化管用造影剤は、T1 強調像で低信号を呈する。
3. Gd 系造影剤による T1 強調像での造影効果は、水の T1 時間延長効果を利用している。
4. Gd-EOB-DTPA 投与後の肝細胞相で、原発性肝癌はすべて肝細胞より低信号を呈する。
5. Gd 系造影剤を用いた灌流画像である dynamic susceptibility contrast 法では、T2*強調系の画像による信号低下を利用している。
解答
1.○糸球体が1分間にどれくらいの血液を濾過し、尿をつくれるかを表します。
2.×T2WIで低信号となり、T1WIでは高信号を呈します。
3.×T1短縮効果を利用しています。
4.×胆汁を産生するgreen hepatomaは肝細胞相で造影剤の取り込みがあります。
5.○です。
第14回-43
第14回-43
Gd-EOB DTPA の MRI 検査に関する正しい記述はどれか。2 つ選べ。
1. 腎機能低下の被検者には原則禁忌である。
2. 成人には本剤 0.2mL/kg を静脈内投与する。
3. 血漿中において Gd-DTPA より高い緩和度を示す。
4. 肝細胞相で造影剤を取り込まない病変として異型結節がある。
5. 肝細胞相で造影剤の取り込む病変として限局性結節性過形成がある。
解答
1.×慎重に投与することと添付文書に記載があります。
2.×0.1ml/kg
3.○EOBの方が緩和度が大きいです。
4.×異型結節は前がん病変であり取り込みがあります。
5.○ focal nodular hyperplasia(FNH)限局性結節性過形成、肝細胞への取り込みに関与するトランスポーターが正常肝よりも増強している可能性があり肝細胞相で取り込みがあり高信号となります。第5回でも出題されました。
第15回-29
第15回-29
造影検査に関する正しい記述はどれか。2つ選べ。
- 緩和時間の逆数を緩和能と呼ぶ。
- SPIO(superparamanager iron oxide)は T1 強調画像で活用する。
- 塩化マンガン四水和物は T2 強調画像にて陰性造影効果を示す。
- Gd-EOB-DTPA の血漿中の r1 値,r2 値は Gd-DTPA より高い値を示す。
- ガドリニウム造影剤 0.1mmol/kg 投与時の血中消失半減期はクレアチニンクリアランスが正常の場合約 30 分である。
解答
1.×緩和時間Tの逆数は緩和速度Rです。緩和能は濃度と緩和速度をプロットした直線の傾きから算出されます。
2.×SPIOはr1:24、r2:85でありT2短縮効果が強く陰性造影剤として用いられています。
3.○塩化マンガン四水和物(ボースデル):T1で陽性、T2で陰性造影剤として使用できます。
4.○です。
5.×正常:1.5時間です。
まとめ
肝嚢胞:動脈相なし、肝細胞相なし
FNH:動脈相あり、肝細胞相あり
血管腫:動脈相あり、肝細胞相なし
古典的肝細胞:動脈相あり、肝細胞相なし
早期肝細胞癌:動脈相なし、肝細胞相なし
異形結節:動脈相なし、肝細胞相あり
green hepatoma:動脈相あり、肝細胞相あり
投与量:0.1ml/kg
排泄:Gdの57%が尿中、39%が糞中
緩和度:DTPAよりEOBが高い
撮像:20分後から可能、造影効果は2時間続く
取り込み:肝細胞→EOB、クッパー細胞→SPIO
造影効果:肝機能により変化、腎機能によらない
出題
第5回-28、第6回-6、第8回-18、第9回-18、第10回-18、第11回-19、第12回-47、第13回-18、第14回-43、第15回-29
参考資料
バイエル薬品(株) EOB・プリモビスト注 添付文書
腹部画像診断の勘ドコロ P55
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