【MRI認定 4】造影剤まとめ、14問

前回のEOBに引き続き、今回は説明しきれなかった造影剤について解説していきます。

心臓の遅延造影、前立腺や子宮などの各造影検査や所見については部位ごとにまとめていく予定ですので今回は割愛します。

またEOBで解説したものについて再度触れることもあり重複してしまいますがご了承ください。

目次

出題される造影剤

ガドリニウム造影剤

造影剤として用いられているガドリニウムイオン(Gd3+)は原子番号64の毒性の強い重金属イオンです。

このまま体内に投与してしまうと吸収され危険なので、造影剤では吸収されない様にキレート化してあります。

キレート化とはガドリニウムイオンを配位結合して配位子(配位結合するイオン)で包み込んでいる状態です。

またその構造によって線状型環状型に分けられます。

各添付文書の構造式より抜粋

線状型造影剤では基底核(淡蒼球・尾状核)と小脳歯状核に沈着することが報告されており、試験でも第13,14,15回で問われております。

使用上の注意

EOBのまとめで記載したことと同じく、

気管支喘息や薬物過敏症を有するショックを引き起こす可能性のある患者です。

またガドリニウム造影剤は腎障害にも特に気をつけなければならず、eGFRが30ml/min/1.73m2未満ではガドリニウム造影剤使用後のNSF(腎性全身性繊維症)発症の危険性が高いとされています。

そのため可能であれば別検査で代替すべきと言われております。

排泄

6時間で80%以上、24時間で90%以上尿中排泄するものがほとんどです。

他に母乳中にも排泄されるため、「投与後24時間は授乳を避けさせること」と添付文書に記載されています。(マグネスコープは48時間と記載)

しかし2019年06月27日に日本医学放射線学会により、「ガドリニウム造影剤使用後の授乳による乳児への影響は非常に小さいので、特段の理由がない限り授乳制限の必要はない」とコメントされています。

理由は「投与後24時間以内の母乳への移行は投与量の0.04%未満、乳児の消化管からの吸収は母乳中の造影剤の1%未満」だからだそうです。

今後これについて問われるかもしれませんので頭の片隅に置いといてもいいかもしれません。

変わった投与方法・撮像方法

転移性脳腫瘍では倍量投与することで腫瘍の検出を向上させ、描出もよくなることが知られています。

dGEMRIC(gadolinium-enhanced MRI of cartilage)という膝の軟骨造影では、検査の2時間前に造影剤を倍量投与し軟骨に浸透させるために10分程度歩行するという方法がとられます。

③ DSC(dynamic susceptibility contrast)は頭部におけるMR灌流画像(PWI)を得る方法で、造影剤分布により血管内外に磁化率効果が生じてT2*WIで組織の信号が低下することを利用しています。撮像にはEPIが使用されます。

経口造影剤

フェリセルツとボースデルがありどちらも常磁性体です。

低濃度ではT1短縮作用、高濃度ではT2短縮作用を示し、主にMRCP撮像時にT2短縮作用を活かして消化管の陰性造影剤として使用します。

MRCPはT2WIなのですが、普段撮像するT2WIよりもTRとTEをもっと長くして撮像します。そうすることにより自由水だけが高信号として残り、その他の組織は無信号として描出されるため結果として胆嚢や胆管、膵管などがコントラストよく描出されることとなります。このTR、TEを長くしT2の影響を強くしたものをheavy T2WIと言います。

しかし観察したい臓器だけ描出できれば良いのですが、腹部の撮影では胃や腸管に残る液体も同時に高信号として描出されてしまいます。そこでフェリセルツなどを使用し消化管内の液体からの信号を抑制するわけです。

フェリセルツ(クエン酸鉄アンモニウム製剤)

Fe3+が作用します。

そのためヘモクロマトーシスなど鉄過剰症の治療を受けている患者には禁忌となっております。

ボースデル(塩化マンガンII水和物)

Mn2+が作用します。

超常磁性酸化鉄製剤(SPIO)

超常磁性酸化鉄粒子→強磁性物質を直径5〜35nmに細粒化し超常磁性化したもの

静脈から投与すると肝臓で網内系細胞(Kupffer細胞)に貪食され凝集し、陰性造影剤として働くことから貪食されたところの信号は低下します。

また癌組織はKupper細胞を持たないためSPIOを取り込めず、癌がある部分は信号が低下しないためにT2WIもしくはT2*WIで「黒い背景に白い点」として描出されます。

このSPIOは鉄を含むためにフェリセルツ同様、ヘモクロマトーシス等鉄過剰症の患者には禁忌となっています。



過去問からの出題

第5回-12

第5回-12
MRCPの撮像技術について、正しい文章を解答して下さい。

b.消化管信号の抑制に経口造影剤を使用した際、T1 強調画像では motion artifact が顕著になる可能性がある。
(問a,c,d,e省略)

解答
○ 消化管信号の抑制に用いる経口造影剤はT2WIで低信号となる陰性造影剤として使用されます。しかしT1WIでは高信号となるため呼吸や蠕動運動により体動があると高信号のものが動くためモーションアーチファクトの原因となります。

第6回-5

第6回-5
Gd-DTPA 造影剤を用いたダイナミック造影検査について、正しい文章を選択して下さい。(正解2つ)

1. 下垂体は高速 SE(spin echo)法 T1 強調像を選択する。下垂体腺腫は、正常下垂体より早期濃染する。
2. 頭部灌流画像は EPI(echo planar imaging)法を選択する。造影剤による脳局所の信号上昇を捉えた曲線から、脳血流パラメータを算出する。
3. 乳房は脂肪抑制を併用した 3D gradient echo(GRE)法を選択する。撮像条件は、空間分解能と時間分解能を両立するために 1 時相 1 分程度に設定する。
4. 肝臓は in-phase の GRE 法を選択する。肝動脈塞栓術後のリピオドールは、障害陰影とならない。
5. 膵臓は脂肪抑制を併用した T1 強調像を選択する。典型的な膵臓癌は動脈相で膵実質より高信号に濃染する。

a.×正常下垂体の方が早く濃染します。
b.×信号上昇ではなく信号低下を捉えます。
c.○です。
d.○です。リピオドール使用直後はCTでは高信号で障害陰影となりやすいですがMRIでは障害陰影とならないためMRIが選択されることがあります。
e.×膵実質の方が染まります。

造影剤の特徴というより所見などの問題でしたが一応抜粋しました。

第6回-23

第6回-23
医療安全管理ついて、正しい文章を解答して下さい。

2.腎機能チェックは造影剤を使用する場合だけでよい。
(問1,3,4,5省略)

解答
○ 造影剤を使用しなければ腎機能のチェックは必要ありません。

第7回-4

第7回-4
次の記述について正しい文章を選択して下さい。

5.MRI造影剤はT1 およびT2を変化させる。
(問1,2,3,4省略)

解答
○です。

第12回-42

第12回-42
膝軟骨 MRI 検査について正しい文章を選択して下さい。

5. dGEMRIC(gadolinium-enhanced MRI of cartilage)は通常の 2 倍量の造影剤を使用する。
(問1,2,3,4省略)

解答
○ 検査の2時間前に造影剤を倍量投与し軟骨に浸透させるために10分程度歩行してもらいます。

第13回-12

第13回-12
乳房の解剖に関する正しい記述はどれか。

3. 造影剤は母乳から排泄される。
(問1,2,4,5省略)

解答
○ 排泄されるがGd造影剤の投与後24時間以内の母乳への移行は投与量の0.04%未満とかなり微量。

第13回-18

第13回-18
MRI の造影検査や造影所見に関する正しい記述はどれか。(正解 2 つ)

1. eGFR は糸球体1分間あたりの濾過能力である。
2. 本邦で認められている消化管用造影剤は、T1 強調像で低信号を呈する。
3. Gd 系造影剤による T1 強調像での造影効果は、水の T1 時間延長効果を利用している。
4. Gd-EOB-DTPA 投与後の肝細胞相で、原発性肝癌はすべて肝細胞より低信号を呈する。
5. Gd 系造影剤を用いた灌流画像である dynamic susceptibility contrast 法では、T2*強調系の画像による信号低下を利用している。

解答
1.○糸球体が1分間にどれくらいの血液を濾過し、尿をつくれるかを表します。
2.×T2WIで低信号となり、T1WIでは高信号を呈します。
3.×T1短縮効果を利用しています。
4.×胆汁を産生するgreen hepatomaは肝細胞相で造影剤の取り込みがあります。
5.○です。

EOBのまとめでも同じく取り扱いました。

第13回-32

第13回-32
MRI 用造影剤に関する正しい記述はどれか。(正解3つ)

1. ガドリニウムは原子番号 64 の重金属で生体に対して強い毒性がある。
2. CT と MRI では造影剤を禁忌とする推算糸球ろ過量(eGFR)の基準値が異なる。
3. 超常磁性酸化鉄製剤(SPIO)はヘモクロマトーシスなど鉄過敏症の患者に禁忌である。
4. 線状型キレート構造のガドリニウム造影剤を繰り返し使用すると小脳歯状核に蓄積する。
5. 高濃度(1.0mol/L)造影剤を急速静注すると造影剤濃度が高くなるため超早期相でより高信号に造影される。

解答
1.○です。
2.×eGFRが30mL/min/1.73m2未満は造影を避けるべき
3.○ヘモクロマトーシス:先天的または後天的に体内の鉄が異常に増加し、肝臓、膵臓、心臓などの臓器に過剰に沈着する病気です。SPIOは鉄を含むため禁忌、過剰に鉄がたまると合併症を起こします。
4.○淡蒼球や尾状核も高信号になるとの報告もあります。環状型では蓄積して高信号になることはないが極微量の蓄積を生じる報告もあるそうです。
5.×MRI造影剤はT2短縮作用も強くなるため高濃度ではかえって信号低下の原因となることもあります。

第14回-34

第14回-34
造影剤に関する正しい記述はどれか。2つ選べ。

1. すべて非イオン性である。
2. 投与後 12 時間は授乳を避ける必要がある。
3. 超常磁性酸化鉄製剤(SPIO)は鉄過敏症の被検験者に禁忌である。
4. CT と MRI では造影剤を禁忌とする推算糸球ろ過量(eGFR)の基準値が異なる。
5. 線状型キレート構造のガドリニウム造影剤は繰り返し使用すると小脳歯状核に蓄積する。

1.×イオン性もあります。
2.×2019/6/27に日本医学放射線学会は24時間以内の母乳への移行、乳児の消化管からの吸収を考慮し特段の理由が無い限り授乳制限の必要はないとコメントしています。ただし添付文書には24時間避ける様にとの記載あり(マグネスコープは48時間と記載)
3.○ヘモクロマトーシス:先天的または後天的に体内の鉄が異常に増加し、肝臓、膵臓、心臓などの臓器に過剰に沈着する病気です。SPIOは鉄を含むため禁忌、過剰に鉄がたまると合併症を起こします。
4.×eGFRが30mL/min/1.73m2未満は造影を避けるべき。
5.○淡蒼球や尾状核も高信号になるとの報告もあります。環状型では蓄積して高信号になることはないが極微量の蓄積を生じる報告もあるそうです。

第14回-40

第14回-40
脳の造影MRIに関する正しい記述はどれか。

5. 小さな転移性脳腫瘍の検出が求められる場合は倍量投与が有用である。
(問1,2,3,4省略)

解答
5.○ 倍量投与にすることにより腫瘍の描出、検出がよくなります。

脳の所見についてでしたが、倍量投与について記載があったため今回取り扱いました。

第15回-5

第15回-5
ガドリニウム造影剤に関する正しい記述はどれか。2つ選べ。

  1. T2 短縮効果がある。
  2. 腎機能障害があっても問題なく投与できる。
  3. 体内に沈着したガドリニウムは洗い出される。
  4. 脳内では基底核と小脳歯状核のみに沈着する。
  5. マクロ環状型は線状型のものよりも体内に沈着しやすい。

解答
1.○です。
2.×eGFRが30ml/min/1.73m2未満ではガドリニウム造影剤使用後のNSF発症の危険性が高いとされています。
3.×です。
4.○基底核(淡蒼球・尾状核)と小脳歯状核に沈着します。
5.×線状型の方が沈着しやすいです。

第15回-29

第15回-29
造影検査に関する正しい記述はどれか。2つ選べ。

  1. 緩和時間の逆数を緩和能と呼ぶ。
  2. SPIO(superparamanager iron oxide)は T1 強調画像で活用する。
  3. 塩化マンガン四水和物は T2 強調画像にて陰性造影効果を示す。
  4. Gd-EOB-DTPA の血漿中の r1 値,r2 値は Gd-DTPA より高い値を示す。
  5. ガドリニウム造影剤 0.1mmol/kg 投与時の血中消失半減期はクレアチニンクリアランスが正常の場合約 30 分である。

解答
1.×緩和時間Tの逆数は緩和速度Rです。緩和能は濃度と緩和速度をプロットした直線の傾きから算出されます。
2.×SPIOはr1:24、r2:85でありT2短縮効果が強く陰性造影剤として用いられているためT2WIもしくはT2*WIで撮像します。
3.○塩化マンガン四水和物(ボースデル):T1で陽性、T2で陰性造影剤として使用できます。
4.○です。
5.×正常:1.5時間です。

バイエル薬品(株)マグネビスト静注添付文書、腎機能低下症例における本剤の血中消失半減期より

EOBのまとめでも同じく取り扱いました。

第15回-48

第15回-48
令和元年 8 月 5 日付で日本磁気共鳴医学会から発令された「臨床 MRI 安全運用のための指針」に関する正しい記述はどれか。

1. 造影剤の使用削減を求めている。
(問2,3,4,5省略)

解答
1.×使用削減は求めていない、同意書の取得や副作用についての対応・教育などが求められています。

第15回-49

第15回-49
MRI 検査時の安全性に対する判断について最も正しいのはどれか。

3.授乳中の患者への造影 MRI 検査は母乳から造影剤が漏出されるので禁忌である。
(問1,2,4,5省略)

3.× 禁忌ではありません。

まとめ

ガドリニウムイオン(Gd3+)は原子番号64の毒性の強い重金属イオン

線状型造影剤では基底核(淡蒼球・尾状核)と小脳歯状核に沈着する

eGFRが30ml/min/1.73m2未満ではガドリニウム造影剤使用後のNSF(腎性全身性繊維症)発症の危険性が高い

母乳中にも排泄されるため、「投与後24時間は授乳を避けさせること」

転移性脳腫瘍では倍量投与することで腫瘍の検出を向上させ、描出もよくなる

dGEMRICは検査の2時間前に造影剤を倍量投与し10分程度歩行する

DSCは造影剤分布によりT2*WIで組織の信号が低下することを利用

経口造影剤はT2短縮作用を活かして消化管の陰性造影剤として使用

フェリセルツ・SPIOはヘモクロマトーシスに禁忌

SPIOはクッパー細胞に貪食される陰性造影

まとめばっかりで淡白な記事になっちゃいました。

出題

第5回-12,第6回-5,第6回-23,第7回-4,第12回-42,第13回-12,第13回-18,第13回-32,第14回-34,第14回-40,第15回-5,第15回-29,第15回-48,第15回-49

 

参考資料・書籍

第一三共(株) オムニスキャン静注 添付文書

バイエル薬品(株) マグネビスト静注 添付文書

バイエル薬品(株) EOB・プリモビスト注 添付文書

ブラッコ=エーザイ(株) プロハンス静注 添付文書

ゲルベ・ジャパン(株) マグネスコープ静注 添付文書

バイエル薬品(株) ガドビスト静注 添付文書

MRI完全解説 P446

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