【MRI認定32】マルチスライス、5問

久々の投稿です。

論文提出の期限が迫っており最近なかなか記事が書けません。

先日、実習にきた学生にマルチスライスのことを聞かれたので今回はマルチスライスにしました。

目次

過去問からの出題

第12回-9

第12回-9
スピンエコー法と比較した場合、高速スピンエコー法の特徴を選択して下さい。 (正解 3 つ)

  1. 脂肪が高信号になる。
  2. 磁化率効果を受けにくい。
  3. 軟部組織のコントラストが低下する。
  4. 撮像可能マルチスライス数が増加する。
  5. T2 フィルタリングにより T2 値の短い組織が強調される。

1.○
2.○
3.○
4.×減少する
5.×T2値の長い組織

第14回-18

第14回-18
マルチスライス法によるスピンエコー法(TR 500ms、TE 10ms、サンプリング時間 8ms)の撮像可能枚数の上限はどれか。

1. 27 枚 
2. 28 枚 
3. 30 枚 
4. 35 枚 
5. 36 枚

1.
2.
3.
4.○スライス数=TR/(TE +Ts/2 +To) Ts:サンプリング時間、To:先行時間
 500/(10+8/2)=35.7
5.

第15回-14

第15回-14
受信バンド幅を広げたときの影響に関する正しい記述はどれか。2つ選べ。

  1. サンプリング時間は延長する。
  2. 化学シフトアーチファクトは低減する。
  3. 撮像可能なスライス枚数は増加する。
  4. モーションアーチファクトは顕著になる。
  5. SNR(signal-to-noise ratio)は向上する。

1.×短縮する
2.○
3.○サンプリング時間が短くなるため
4.×低減する
5.×低下する

第15回-16

第15回-16
高速スピンエコー法にてTR 5000ms、ETL 15、Echo space 15ms、Matrix size 256×256のlinear収集で実効TE を 135msに設定したとき、撮像可能な最大スライス枚数はどれか。

1. 18
2. 20
3. 22 
4. 24 
5. 26

1.
2.
3.○5000/(15×15)=22.2
4.
5.
実行TEは135msだが撮像可能枚数に必要な情報は最終エコーの時間(最後のTE)
最後のエコー時間は15×15=225ms
TR5000/225=22.22222 なので22枚
でも実際には90-180°パルス時にも多少時間がかかるので21枚くらいなのでは?

第16回-30

第16回-30
頭部 FLAIR 像を示す。正しいのはどれか。2 つ選べ。

1. 反転時間(TI)が不適切である
2. 造影剤による信号増強を認める
3. クモ膜下出血症例に観察されるものと同様の信号変化を認める
4. 3D FLAIR を撮像することで脳脊髄液の信号抑制不良を改善できる
5. マルチスライス枚数を増やすと脳脊髄液の信号抑制不良を改善できる

1.×不適切ではCSFの信号が出てくる
2.○
3.×
4.○ 2DではIRパルスを受けずに撮像面に流入する可能性がある
5.×



まとめ

まず、まえおきとして

マルチスライスはMRIには必須の技術であり撮影時間の短縮に貢献しています。
他に多層撮像やマルチプラナーと呼ばれます。

例えば、TR:4000ms、Ny:256、NEX:1 、ETL:16のときの撮像時間は
(4000×256×1)/16 = 64,000ms = 64秒 となります。

ここで10スライス撮像とすると上記を10回繰り返すことになるので
(4000×256×1)/16 ×10 = 640秒(10分) となります。

現実的な撮像時間ではありませんね。ここでマルチスライスが使われます。

FSEについてはこちらで説明いたします。

原理

先ほどの場合で、90°パルス-180°パルス間の時間を約10msとし、ESp=15msだとすると、(ETL=16)

最後のエコーを取り終わる時間は250msとなります。

これは1ショット目となりますが、2ショット目以降も考慮すると以下となります。

90°パルスを照射してから次の90°パルスまでの時間がTRとなります。
TEは90°パルスからエコーの時間です。(今回はわかりやすくするため実行TEは無視してTE=250msとします)

実際に図に示すとただ待つだけで何もしない時間が3750msあることに気づきます。
これを不活時間と言います。

この不活時間に別のスライスを撮像するのがマルチスライスとなります。

このように1スライス目の撮像途中で2スライス目の撮像、3スライス目の撮像、、、と次々に撮像していき、
TR(4000ms)経ったらまた1スライス目の続きの撮像(2ショット)を行います。

 

冒頭のまえおきに戻ります。

TR:4000ms、Ny:256、NEX:1 、ETL:16
そしてESp=15、90°-180°時間=10ms だとして10スライスをマルチスライスで撮像するには?

まず最後のエコー時間は250msとなります。
TR=4000msなため不活時間中に250ms ×10 =2500msは収まりますね。
1スライス目は(4000ms×256)/16=64,000msで撮り終わります。
最後の10スライス目は、、、66,250msとなります。

図で表すと気持ち悪いですがこんな感じとなります。

マルチスライスを使用しなければ1スライス目の下に並ぶ2〜10スライスが横1行に並びます。(64,000ms ×10=640,000ms)

マルチスライスは高速撮像のような根本的な時間短縮技術ではありませんが、
効率を良くすることで約1/10にまで時間短縮することができました。

臨床ではMRIが自動で最適なTRを提示してくれますが、このような原理となっています

 

まとめると、

TRが長いほど、スライス枚数が増える
TEが短いほど、スライス枚数が増える(実行TEではなく最後のエコー時間というところに注意)
ETLが小さいほど、スライス枚数が増える(なのでFSEよりSEの方がスライス多く撮れる)

また今回は説明に入れませんでしたがTs(サンプリング時間)も関係し、Tsが長いほど撮像可能枚数は減ってしまいます。
TsはBW(バンド幅)と反比例するので、
BWを広げるとスライス枚数が増え、BWを縮めると枚数は減ります。


今回も簡単な説明になってしまいました。

今年ももう終わりますね。あと一記事くらい書きたい。

出題

第12回-9,第14回-18,第16回-30

参考書籍

MRI完全解説 P229
MRIパワーテキスト P185

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