【MRI認定 42】EOBの造影パターン

EOB-DTPAを静注後の肝臓の造影コントラストについてです。

新しい過去問ではあまり出題されていませんが、第5、6、12〜14で出題されています。

臨床でも使う知識なため覚えておくと便利です。

目次

EOB・プリモビスト

一般名:ガドキセト酸ナトリウム
過去問でGadolinium-ethoxybenzyl-diethylenetriamine penta-aceticacidと呼ばれたことがあるので注意。

造影剤投与から数分間は細胞外液性造影剤と同様に血流評価を行うことができます
(ダイナミックMRIにより動脈相〜門脈相で血流評価可能)

2分後以降では移行相と呼ばれ、肝細胞への取り込みが進みます。そのため正常肝実質は染まりますがHCCなどでは低信号となります。この移行相をwash-outとしてはいけません。

血流により生じるwash-outは門脈相において評価することとされています。

被膜評価において、肝細胞相にまでなると肝実質がしっかり染まってしまい腫瘍の被膜とのコントラストがなくなり評価が困難となるため移行相までで行うこととされています。

適切な動脈相の撮像タイミングは後期動脈相と言われており、動脈と門脈が染まっており、静脈が染まってないタイミングとなります。動脈のみが染まって門脈がまだ染まっていなければタイミングが早かったということとなります。このタイミングを逃さないためにDISCO(DIfferential Sub-sampling with Cartesian Ordering)という撮像法を用いて多時相撮像する方法もあります。

また、EOBでは動脈相付近で一過性の呼吸困難が生じアーチファクトが出現することがあります(transient severe motion)。DISCOはこのアーチファクトを避けるためにも有用となることがあります。

造影パターン

多血性肝細胞癌

動脈相(強いて言うなら後期動脈相)にて強く造影され、門脈相にてwash outされ被膜は高信号となります。

肝細胞相では造影剤の取り込みがなくコントラストが付きます。

乏血性肝細胞癌

造影前で若干の高信号の場合があります。

転移性肝腫瘍

転移性肝腫瘍は乏血性(大腸癌)や多血性(腎細胞癌、甲状腺癌)など様々ですが、多くは乏血性です。

リング状の造影効果は、腫瘍自体の辺縁に腫瘍細胞が多く密集することによる造影効果と、腫瘍周囲の肝の造影効果が合わさったものです。

green hepatoma(胆汁産生性肝細胞癌)

この造影パターンは過去問に既出なので注意です。

肝細胞相にて取り込みがあります。

胆汁産生能がありますが排泄する胆管が未熟で腫瘍内に胆汁が蓄積します。

肉眼的所見ではホルマリン固定によって緑色調を呈します。

中分化型肝細胞癌が多いです。

異型結節

異型結節は肝臓癌の前癌病変です。

肝細胞相で取り込みがあり、過去問でも出題されました。

限局性結節性過形成(FNH)

focal nodular hyperplasia:FNHは良性の腫瘤です。若年から中年に好発しやや女性に多く見られます。

動静脈奇形などの肝内血流異常がに伴う過形成性変化と考えられています。

肝細胞相で取り込みがあり、こちらも過去問で出題されました。

肝血管腫

海綿状血管腫と毛細血管腫に分類されますが、大抵目にするのは海綿状血管腫です。

T2とT1の信号は嚢胞と類似していますが、DWIでは高信号となります。

動脈相では辺縁から染まり(peripheral globular enhancement)、門脈相から移行相にかけて徐々に内部に向かって染まっていきます(filling in phenomenon)。

peripheral globular enhancementは過去問にも出ています。

肝嚢胞

T2で強い高信号となります。水強調画像では特に高信号です。

造影による濃染はありません

 

 

※造影効果に関するトランスポーターについて
OATP1B1、OATP1B3は肝細胞内への輸送に関するトランスポーターと考えられており高信号肝細胞癌ではトランスポーターの発現が亢進、低信号肝細胞癌では発現が低下していると報告されています。また分化度が低下するにつれて発現の低下が進み、肝細胞相での信号も低下すると報告されています。
MRP2は細胞外へ輸送するトランスポーターと考えられています。造影効果はこれらトランスポーターのバランスによります。



まとめ

造影パターンのまとめです。

典型的な肝細胞癌のパターンは動脈相で染まりその後wash outし、肝細胞相にて取り込みがありません。転移性肝腫瘍ではリング状に濃染します。green hepatomaでは肝細胞相でも染まります。

良性結節では、異型結節、FNHで肝細胞相での取り込みがあります。肝血管腫ではperipheral globular enhancementという特徴的な染まり方をします。肝嚢胞は造影効果がありません。

 

肝細胞相で取り込みあるもの

関西の暴走族元気良く行けい
肝細胞相 green hepatoma 限局性結節性過形成(FNH) 異型結節

ちょっとでもわかりやすくするために初めてイラスト載せてみました。

 

 

今回紹介したものは典型例であり、臨床で必ずしもこのようなパターンをとるとは限りません。

ただし試験対策としては典型例を覚えることが大事ですのでチェックしておきましょう。

過去問

第5回-28
肝特異性造影剤Gd-EOB-DTPAの一般的な造影パターンについて、正しい文章を解答 して下さい。

a.肝嚢胞は動脈相で増強効果なし、肝細胞相では造影剤の取り込みはない。
b.限局性結節性過形成(FNH)は動脈相で増強効果あり、肝細胞相では造影剤の取り込みはない。
c.血管腫は動脈相で peripheral globular enhancement、肝細胞相では造影剤の取り込みはない。
d.古典的肝細胞癌は動脈相で増強効果あり、肝細胞相では造影剤の取り込みはない。
e.肝細胞癌組織内に胆汁を産生する green hepatoma は動脈相で増強効果あり、肝細胞相では造影剤の取り込みはない。

第6回-6
Gd-EOB-DTPA 造影検査について、正しい文章を選択して下さい。(正解2つ)

1. 健常人に投与した場合、50%以上が尿中から排泄される。
2. 投与後、肝臓の信号増強効果は少なくとも2時間持続する。
3. 投与後、約 20 分で肝臓の Kupffer 細胞に取り込まれ T1 強調像で肝実質は高信号を呈する。
4. 動脈相で濃染する結節と肝臓のコントラストは、一般的に Gd-DTPA より高く描出される。
5.ほとんどの血管腫は wash out が遅延するので、投与後 20 分の相は高信号として描出される。

第12回-47
Gadolinium-ethoxybenzyl-diethylenetriamine penta-aceticacid 検査について 正しい文章を選択して下さい。(正解 2 つ)

  1. 主として胆汁に排泄される。
  2. 細胞外液と肝細胞に分布する。
  3. 造影剤投与後 15 分から撮像可能である。
  4. 造影効果は腎機能の程度によって変化する。
  5. 造影剤はトランスポータによって肝細胞に取り込まれる。

第13回-18
MRI の造影検査や造影所見に関する正しい記述はどれか。(正解 2 つ)

1. eGFR は糸球体1分間あたりの濾過能力である。
2. 本邦で認められている消化管用造影剤は、T1 強調像で低信号を呈する。
3. Gd 系造影剤による T1 強調像での造影効果は、水の T1 時間延長効果を利用している。
4. Gd-EOB-DTPA 投与後の肝細胞相で、原発性肝癌はすべて肝細胞より低信号を呈する。
5. Gd 系造影剤を用いた灌流画像である dynamic susceptibility contrast 法では、T2*強調系の画像による信号低下を利用している。

第14回-43
 Gd-EOB DTPA の MRI 検査に関する正しい記述はどれか。2 つ選べ。

1. 腎機能低下の被検験者には原則禁忌である。
2. 成人には本剤 0.2mL/kg を静脈内投与する。
3. 血漿中において Gd-DTPA より高い緩和度を示す。
4. 肝細胞相で造影剤を取り込まない病変として異型結節がある。
5. 肝細胞相で造影剤の取り込む病変として限局性結節性過形成がある。

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