腱板断裂(Rotator cuff tear)

目次

用語

上腕骨骨頭に付着するRotator cuffが損傷。
最も損傷しやすいのは棘上筋の大結節付着部付近。
腱板損傷とも呼ばれる。

Rotator cuff:棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋

腱板とは見た目が板状に見えることから呼ばれている。

解説

原因

原因は外傷性と非外傷性がある。

外傷性:転倒やスポーツによる。

非外傷性:加齢による変性などによる。

症状

肩を挙げた時の痛み。そのことにより肩が挙げられない。しかし痛みが我慢できれば挙げることが可能(ちなみに五十肩との違いは、五十肩では関節が拘縮してしまうため頑張っても挙がらない)。

夜間の痛み。

無症状の場合もある。

肩の痛みは断裂した腱板によるものだけではなく、滑膜炎や滑液包炎、上腕二頭筋炎、肩峰下インピンジメントなどによることもある。

Rotator cuffの解剖と所見

解剖

模型による解剖

肩甲棘の上に棘上筋。肩甲棘の下に棘下筋、さらにその下に小円筋。肩甲骨の前面側に肩甲下筋がある。

MRIでの解剖

第15回MRI認定試験より

腱板断裂の所見

腱板断裂をイメージした図絵

余談

ちなみに一般撮影になりますが、

比較的大きい完全断裂が長期的に存在すると、肩峰下縁と上腕骨頭頂点との距離(AHI:acetabular-head index)が短縮します。

腱板断裂を生じると、骨頭の関節窩への引きつけが弱くなり相対的に三角筋が優位となるため骨頭が上方化します。AHI7mm未満では断裂の可能性が高くなります。

上図でも、完全断裂では上方化していることがうかがえます。

認定試験でのポイント

肩の検査では関節唇や筋肉などを観察するためにMRIを用いるので、過去問にもよく出題されます。

特に解剖や腱板損傷、SLAP損傷などが問われていました。

肩について抑えるポイントは、

解剖ではRotator cuff(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)とそのMR画像上での位置関係。

腱板損傷やSLAP損傷ではどこが傷害され、MR画像でどのようにみえるのかを覚えておきましょう。

SLAP損傷

過去問

18-問題 2 骨軟部疾患について正しいのはどれか。2 つ選べ。

1. 腱板損傷は棘下筋に好発する。
2. 円板状半月板は外側に好発する。
3. テニス肘は主に尺側手根伸筋の起始部の疾患である。
4. TFCC(triangular fibrocartilage complex)損傷は手関節尺側に好発する。
5. SLAP(superior labrum anterior and posterior)損傷は股関節唇の上部に好発する。

1.×棘上筋の大結節付着部付近で好発。問題4参考。
2.○円板状半月板は断裂しやすい。円板状半月板
3.×正式には「上腕骨外側上顆炎」。短橈側手根伸筋の起始部の疾患。腱への負担が原因。
4.○TFCC(三角線維軟骨複合体)、三角繊維軟骨・背側遠位橈尺靭帯・掌側遠位橈尺靭帯・尺側側副靭帯
5.×肩関節の上方関節唇損傷、上腕二頭筋の作用による。

18-問題 4 肩のMRI 画像を示す。マジックアングルアーチファクトの影響を受けている部位はどれか。

日本磁気共鳴専門技術者認定機構より

1. 棘上筋腱
2. 棘下筋腱
3. 肩甲下筋腱
4. 上腕二頭筋短頭腱 
5. 上腕二頭筋長頭腱

1.○腱板断裂のほとんどは棘上筋の大結節付着側の約2.5cm以内に発生しやすい。腱板断裂が無くてもT1やT2*のようなTEの短いシーケンスではマジックアングルアーチファクトにより高信号となることがある(図左)。読影には脂肪抑制T2(図右)による確認が必要。腱板断裂があると脂肪抑制T2で高信号となるが上図では見られないため腱板断裂はないと思われる。マジックアングル
2.3.4.5.

15-35) 肩関節の T1 強調画像を以下に示す。正しい記述はどれか。2つ選べ。

  1. A の断面は b である。
  2. C は鎖骨である。
  3. C は肩峰である。
  4. D は棘上筋である。
  5. D は棘下筋である。

1.○
2.×烏口突起
3.×
4.○
5.×

12-38)図中の矢印で示す筋肉を選択して下さい。(正解 1 つ)

日本磁気共鳴専門技術者認定機構より

1. 棘上筋
2. 僧帽筋
3. 三角筋
4. 棘下筋
5. 大円筋

1.○肩甲骨ー上腕骨
2.×脊椎ー肩甲骨
3.×鎖骨肩甲骨ー上腕骨
4.×肩甲骨ー上腕骨
5.×肩甲骨ー上腕骨

11-46)肩関節の運動に関与する筋肉を選択して下さい。(正解 3 つ)

1.回外筋
2.棘上筋
3.垂体筋
4.三角筋
5.大円筋

1.×上腕骨橈骨ー尺骨
2.○肩甲骨ー上腕骨
3.×錐体筋?恥骨に付着する腹部の筋肉
4.○鎖骨肩甲骨ー上腕骨
5.○肩甲骨ー上腕骨

10-29)

11-46)と同じ問題

7-16)関節の MRI について、正しい文章を選択して下さい。(正解1つ) 

1.肘部管症候群は、ガングリオンなどによる正中神経の圧迫が原因で起こり、T2 強調像の横断面で観察しやすい。
2.肩関節の棘上筋腱は肩の腱板で最も断裂しやすく、外転外旋位の脂肪抑制 T2 強調像の斜冠状断面が観察しやすい。
3.膝の十字靱帯断裂は、前十字靱帯より後十字靱帯で生じやすく、T2 強調像の矢状断面で観察しやすい。
4.足関節におけるマジックアングル現象は、靱帯や腱に対する高信号領域の出現があり、T2*強調像の矢状断面で問題となりやすい。
5.手関節のTFCC(triangular fibrocartilage complex)損傷は、手根骨と尺骨を支持している靱帯や腱鞘の損傷のことで、T1 強調像の冠状断面で高信号域として観察できる。

a.×尺骨神経の圧迫。
b.×外転させずに、中間位〜外旋位。
c.×前十字靭帯の方が断裂しやすい。
d.○マジックアングル
e.×T2*冠状断面。
解説(デルマトーム)

6-(4) 関節の MRI について、正しい文章を選択して下さい。(正解1つ) 

1.肘部管症候群は、ガングリオン等による正中神経の圧迫が原因で起こり、T2 強調像の横断面で観察しやすい。
2.肩関節の棘上筋腱は肩の腱板で最も断裂しやすく、外転外旋位の脂肪抑制 T2 強調像の斜冠状断面が観察しやすい。
3.膝の十字靱帯断裂は、前十字靱帯より後十字靱帯で生じやすく、T2 強調像の矢状断面で観察しやすい。
4.足関節におけるマジックアングル現象は、靱帯や腱に対する高信号領域の出現があり、T2* 強調像の矢状断面で問題となりやすい。
5.手関節のTFCC(triangular fibrocartilage complex)損傷は、手根骨と尺骨を支持している 靱帯や腱鞘の損傷のことで、T1 強調像の冠状断面で高信号域として観察できる。

a.×尺骨神経の圧迫。
b.×外転させずに、中間位〜外旋位。
c.×前十字靭帯の方が断裂しやすい。
d.○
e.×T2*冠状断面。
解説(デルマトーム)

5-(35) 正しい文章を解答して下さい。

a. 寛骨は恥骨、腸骨、尾骨からなる。
b. 肩関節腱板には、棘上筋腱、棘下筋腱、肩甲下筋腱、大円筋腱がある。
c. 足関節における外側側副靭帯は前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯からなる。
d. 前十字靭帯は大腿骨内顆の顆間窩上部から斜前下方に走行して脛骨顆間隆起の前方に付着する。
e. 頚髄神経は8対ある。

a.×恥骨、腸骨、坐骨
b.×棘上筋腱、棘下筋腱、肩甲下筋腱、小円筋腱
c.○
d.×大腿骨外側顆、顆間窩後側外方〜脛骨顆間隆起
e.○
解説(デルマトーム)

 

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