クエンチは液体ヘリウムを使用している超電導型MRIにのみ生じる現象で、何らかの原因で超電導から常伝導へと遷移し磁場が失われる状態のことを言います。
過去問からの出題
第5回-30
第5回-30
クエンチに関して、正しい文章を解答して下さい。
a. ヘリウムガスが漏れ、大気中の酸素濃度が 15%未満になると呼吸困難となる。
b. ヘリウムガスは床付近にたまる。
c. ヘリウムガスは毒性があるため注意が必要である。
d. クエンチは液体ヘリウムに浸した磁石の線材が過度に熱せられることによって発生する。
e. 精度管理のため、定期的にクエンチを行なうことが必要である。
a.○人は肺胞でガス交換をし酸素を取り入れていますが、そこでの酸素濃度は約16%と言われており濃度勾配により交換されています。空気中の酸素濃度は約21%ですがクエンチなどにより16%未満となると濃度勾配により人体から酸素が抜けてしまいます。外部の酸素濃度が肺胞腔より低い状態では呼吸を繰り返すほど酸素が奪われ酸欠へとなります。
b.×空気より軽いため天井付近にたまります。
c.×毒性はありません
d.○です。
e.×制度管理のためにクエンチは起こしません。
第6回-24
第6回-24
安全性に関して、正しい文章を解答して下さい。
1.クエンチで最も危険なのが窒息である。
a.○気化したヘリウムは毒性はないものの空気中の酸素濃度を低下させるため窒息につながります。また気温も低下するために凍傷の危険もあります。
第6回-31
第6回-31
クエンチについて、正しい文章を選択してください。(正解3つ)
1.永久磁石型 MR 装置でもクエンチが発生することがある。
2.緊急減磁装置を作動させると冷媒が気化し、クエンチが発生する。
3.霧状の雲が天井近くに現れた場合、ヘリウムリークの可能性がある。
4.クエンチとは何らかの理由で超電導状態が保てなくなるため起こる現象である。
5.クエンチが発生した場合、クエンチが完全に治まるのを待ってから患者退避を行う。
a.×発生するのは超電導型のみです。
b.○です。
c.○この時点ではまだ検査室のドアが開かなくならないので、まずは速やかに患者を避難させます。ヘリウムは分子が小さく小さな漏れでも良く透過します。
d.○です。
e.×放っておくと患者が窒息してしまうため早急に患者退避を行います。
第7回-35
第7回-35
保守点検やその関連事項について正しい文章を選択してください(正解は2つ)
1.緊急減磁装置の動作確認のため定期的にマグネットをクエンチさせて点検する。
2. 検査室の RF シールド性能はシールド材料の性能で決まるので低下することはない。
3. RF 受信コイルのケーブル接続部や絶縁被覆の損傷は高周波やけどの原因になることがある。
4.超伝導マグネットの冷媒ヘリウムは、冷凍機で冷却されていれば蒸発しないので減ることはない。
5.ヘリウム排気管や排気口に詰まりや閉塞があるとクエンチ時に検査室内に気化したヘリウムが漏れることがある。
1.×保守点検でクエンチさせません。
2.×穴や隙間ができるとシールド性能は低下します。
3.○です。
4.×少しずつヘリウムは蒸発して減っていきます。しかしphilipsの1.5Tではヘリウムが7Lで済み、操作者が消磁と励磁できる装置も出てきました。
5.○です。
第7回-37
第7回-37
クエンチに関して、正しい文章を選択して下さい。(正解1つ)
1.ヘリウムガスが漏れ、大気中の酸素濃度が 25%以上になると呼吸困難となる。
2.ヘリウムガスは床付近にたまる。
3.ヘリウムガスは毒性があるため注意が必要である。
4.クエンチは液体ヘリウムに浸した磁石の線材が過度に熱せられることによって発生する。
5.精度管理のため、定期的にクエンチを行なうことが必要である。
1.× 酸素濃度が18%未満の環境に置かれたときに酸素欠乏症の症状が現れると言われていますが個人差があるようです。
2.×空気より軽いので天井付近にたまります。
3.無毒ですが酸素濃度が下がるので注意。
4.○です。
5.×クエンチしません。
第7回-38
第7回-38
MR 装置に使用される冷媒(ヘリウム及び窒素)の特性について、正しいものを解答して下さい(正解 4 つ)
1.無臭
2.不燃性
3.非毒性
4.気化した場合、周囲に低温霧を生じる。窒素の霧は急速に床に降下する。
5.室温(20°C)では、1L の液体ヘリウムからは約 50L のヘリウムガスが発生し、1Lの液体窒素からは約 30Lの窒素ガスが発生する。
1.○
2.○
3.○
4.○
5.×どちらも約700倍に気化膨張します。
第8回-37
第5回-30、第7回-37と類似
第10回-41
第10回-41
保守点検に関連する事項について正しい文章を選択してください。
4.ヘリウム排気管(クエンチ管)やヘリウムガス排気口は、定期的に点検しなければならない。
4.×保守点検項目にはありません。
第10回-50
第10回-50
第6回-3と同問
第11回-29
第11回-29
クエンチに関する正しい記述を選んでください。(正解 3 つ)
1.クエンチを起こした場合は真っ先に酸素濃度をチェックする。
2.マグネットの緊急減磁装置のスイッチを押した時のみ発生する。
3.故意にクエンチを起こす場合は事前に消防署に連絡する必要がある。
4.クエンチが発生すると, 液体ヘリウムは体積が 100 倍のヘリウムガスになる。
5.マグネット内部の静磁場コイルが超電導状態から常電導状態へ遷移する現象である。
1.○クエンチ時の患者避難の際、MRI室内の酸素濃度が低下していれば救助者まで酸欠状態に陥ってしまうためまずは酸素濃度を確認してから行動します。
2.× 何らかの原因で冷凍機やコンプレッサーが停止することでマグネットの温度が上昇してもクエンチが生じます。
3.○火災等への誤認のため。また誤通報防止のためにも院内関係者へも連絡しておくべき。
4.×約700倍程度。
5.○です。
第13回-27
第13回-27
クエンチに関する正しい記述はどれか。(正解 3 つ)
1. 緊急減磁装置を動作させるとクエンチが発生する。
2. 永久磁石型 MR 装置でもまれにクエンチが発生する。
3. クエンチが発生しても磁力が保たれているので吸引に関して注意が必要である。
4. 野外のヘリウムガス排気口の付近では通行人などが近づかないように警告表示板などを設置する。
5. クエンチ発生時 MR 室(撮像室)内の圧力は少し高くなるため、ドアは外開きもしくはスライドドアであることが望ましい。
1.○です。
2.×液体ヘリウムを使用していないためクエンチしない
3.×クエンチ後は急激に磁力が失われると架台内の患者に影響を与える可能性があるため約20秒かけて磁力が減衰するように設計されています。問はおそらく”クエンチしても変わらず磁力が保たれ続ける”というニュアンスと捉えられるので×と思います。
4.○放出されたヘリウムガスが通行人にあたると凍傷などを引き起こす可能性があるため
5.○です。余談として緊急排気システムが作動した場合、検査室内が陰圧となり外開きドアはかえって開きにくくなることもあります。
第14回-33
第14回-33
MRI検査の安全性に関する正しい記述はどれか。
5. クエンチ時に最初に確認するのは酸素濃度計である。
5.○です。クエンチ時の患者避難の際、MRI室内の酸素濃度が低下していれば救助者まで酸欠状態に陥ってしまうためまずは酸素濃度を確認してから行動します。
第15回-45
第15回-45
クエンチに関する正しい記述はどれか。2つ選べ。
- ヘリウムガスは毒性かつ引火性である。
- 永久磁石型 MR 装置でもまれに発生する。
- MR 室(撮像室)内のドアは内開きであることが望ましい。
- ヘリウムガス排気口の付近には警告表示板などを設置して注意喚起すべきである。
- 緊急減磁装置作動時に磁場が 20mT になるまでの時間は取扱説明書に記載されている。
1.×非毒性・不燃性・無臭
2.×
3.×外開きまたはスライド式が望ましいです。ただ排気システムが作動すると陰圧となり内開きの方が開きやすくなることもあります。ですが基本は外開き!
4.○外部の人にヘリウムガスが当たらないように。
5.○磁石中心の磁場強度が20mTに低下する時間を記載しなければならないです。
第15回-50
第15回-50
以下の MRI の危険因子に関する説明で正しいのはどれか。
3. クエンチによって液体窒素が気化しても静磁場強度は保たれる。
3.×クエンチにより磁場は低下します。
まとめ
ヘリウム
非毒性・不燃性・無臭
空気より軽く気化すると天井付近に溜まります。
空気の酸素濃度は約21%ですが、約18%から酸素欠乏症、約16%未満から呼吸困難となります。
液体ヘリウム、液体窒素ともに気化すると約700倍となります。
ヘリウムリークすると霧状の雲が天井近くに現れます。
クエンチ
超電導磁石でのみ発生します。常伝導磁石、永久磁石では発生しません。
クエンチの原因として、、
・液体ヘリウムが減り磁石内部の温度が上昇
・緊急減磁スイッチが押される
・外部からの機械的衝撃
などがあります。
精度管理や保守点検などで故意にクエンチを起こさせることはありません。
→ただしその他理由など故意にクエンチを起こす場合は事前に消防署に連絡する必要があります。
クエンチによる危険
・窒息(一番危ない)
・凍傷
クエンチが生じた場合
・まずは酸素濃度計を確認
・患者の避難
超伝導マグネットの冷媒ヘリウムは、冷凍機で冷却されていますが少しずつ蒸発します。
ヘリウム排気管や排気口に詰まりや閉塞があるとクエンチ時に検査室内に気化したヘリウムが漏れることがあります。
→ただし保守点検の項目には排気管や排気口の点検はありません。
→ヘリウムガス排気口の付近では通行人などが近づかないように警告表示板などを設置します。
クエンチ後は急激に磁力が失われると架台内の患者に影響を与える可能性があるため約20秒かけて磁力が減衰するように設計されています。
ドアは外開きもしくはスライドドアが望ましいです。
クエンチに関しては暗記だけですし、簡単なものばかりなのでチェックしておきましょう。
出題
第5回-30,第6回-24,第6回-31,第7回-35,第7回-37,第7回-38,第8回-37,第10回-41,第10回-50,第11回-29,第13回-27,第14回-33,第15回-45,第15回-50
参考書籍
MRI安全性の考え方 P140
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